"君がいなくて寂しい"のだと急に勘付いたのは
うろこ雲がはびこった
夏の終わりの夕暮れ時に
“今日は傘が必要かな?“と出掛けに聞かなかったことを思い出したからだ
“個人の喪失“と"世界の継続“を
なんとか言葉にしたかったけれど
“世界“については全然、頭に浮かんでこなくて
情けない今の僕には、“君の喪失“ばかりが
この胸を締め付けていく
わかっているよ
現代詩的には"世界"なんていう
壮大なテーマを掲げた方がいいってことは
― 泥だらけの大地から
見たことのない預言が始まる ―
しとやかに秋の雨が和音を奏でる遅い朝食の午後に
“世界の創出“をテーマに詩を書きかけて
君は“失敗してるね“とはしゃいで笑ったんだ
永遠に秋雨が降り続いて世界が始まるって詩だよ
今なら君が笑った理由もわかる気がするのだけれど
それでも、いま僕が、あいも変わらず
笑えない拙作を紡ごうとしているのは
"君の不在"を詩にしたいだけなのか
それとも
"君の不在"を糧にして、前向きな言葉で自分を励ましたいだけなのか
全然、わからなくて、また、空を見上げる
― 神様が夏の終わりを告げる
それは傾げた日々の美しい終末 ―
それもまた、君が笑ったやつだ
楽しそうに
顔をくしゃくしゃにして
ちぎれちぎれになった想いが
秋の始まりを匂わせた
薄い無花果のような空をあてもなく流れていく
多分、まだ、しばらく天気は持つのだろう
でもさ、今更ながら僕は思うんだよ
あきれた君の言いつけ通りに
折りたたみ傘ぐらいは持ってくればよかったよ