芸術的な手腕を私に見せつけて
桜色の季節を
描き切るのは大変なことだ
木陰に静む
木製のベンチ
僕はかばんを枕に
光と陰と文庫本と
これまでの騒がしい呼吸を
比較する
咲き誇る風をバックに
噴水が静かな時を刻むなら
小学校にあがりたてぐらいの男の子の
落っことしたソフトクリームを
申し訳なさそうに
蟻んこが舐めにきた
ブランコの揺れるざわめきに紛れて
光と陰の握手の音が
微かに鼓膜を震わせる
ミクロの世界で浮遊する
名もない星の住人が
はるか彼方の薫りを運ぶ
僕はまどろみの世界で
春の女王がはにかんだ
安らぎのさわりに手を触れる
芸術的な手腕を誇らしく見せつけて
あまねくティアラが提示する
みなぎる陽気を盾として
僕はこの鼓動の多幸感を
素知らぬ誰かの物語に当てはめる
まどろむ安らぎの中にいる
宇宙の深淵に手を伸ばす
春に共鳴する