幻想的な日々。はまだ我の手にない。

演劇とテレビと音楽。お笑いと小説と映画。そして幻想的な日々はまだ我の手にない。 でもあなたのことを想ったり。あなたの幸せを願ったり。詩を書くのも好き。ほんとはもっと明るく楽しい人生を送りたいだけなのに。。。難しいです。男の子でも女の子でもそんな年頃なのかもしれません。

献本 -フォグブルーの洞穴にて-

ホラー小説を読みふけっている

ほら 命からがら逃げ惑う
フォグブルーに覆われた深く湿った森の奥
オオカミの声
霧に濡れた君の髪の色

くだらないことは読みたくないから
"現代社会の闇"とか
"顔の見えないお隣りさん"とか

洞穴の底 何百年も隠された
真紅のべべに黒いおかっぱ頭のお嬢ちゃん
歌舞伎化粧
おちょぼ紅に憂い一重

しゃらくさいことも読みたくないよ
"怨念"とか"掟"とか
"再生数の稼ぎ方"とか


ホラー小説を手に取ったのは
それを読む あなたの横顔が
哲学的に冷徹で恨めしかったから

あなたの思慮を追いかけて
狂気は森をさまよい始める
幽き霊気に心は打ち震えながら
ホラー小説に似た恋愛小説は始まる

いつまでも降り続く霧の雨…


恋愛小説を読みあさっていた

命の尊厳、ただそれだけに
霊験あらたかに沈んでいった
君の横顔が妙におぞましかったから

僕は自分に息巻いた
"ホラを吹くなよ、裏切ったのは僕の方だよ"


君との記憶を忘れたふりして
虚ろな霊(こころ)はさまよい続ける
君の魂(すがた)を霧に霞ませて

深く湿った森の
その奥の洞穴に
静かに飾られたのは
僕らが明け暮れたホラー小説と
読みかけた恋愛小説、その数頁だけ

全てを雨のせいにして
恋愛小説に似たホラー小説は…